常夏の国、地形と季節、奇妙な建物群について




常夏の国に旅をしてきた。
マレー半島随一歴史のある街と、そのさきっちょのジョホール海峡を隔てた小さな島。
マラッカと、シンガポール。(上の写真がマラッカ。)
夏の空と、強い陽射しと、乾いた風は両者に同じだけれども、積み重ねた時間の持つ空気は大きく違う。



シンガポールからマラッカまでは、バスで片道約4時間ほど。
シンガポール国内の極端なほど都市的な風景を横目で流し見ているうちに、バスはいつの間にか国境を越える。
イミグレーションでの確認は"amico?"、"Have a nice holiday."の二言だけだった。名前ひとつの、軽やかな越境。
不思議な感覚。
日本とお隣の国は、もうちょっと遠い気がする。



マレーシア国内に入ると、打って変わって熱帯植物の林が延々と続く。
日本の植物とはまったく違う形状の、見慣れない木々をぼーっと眺めながら、「地形」や「気候」は思っているよりも強烈に、その土地に暮らす人間の「性質」「在り方」のようなものを規定するのだな、と考えていた。



そう、「気候」について。
四季は当たり前のように日本人に寄り添うけれども、もしかしたら最も日本を日本たらしめているのは四季なのかもしれない。
春、夏、秋、冬と季節が巡るたびに、わたしたちは形のあるものも、ないものも、あまりにもたくさん享受しているのだなぁ。
今回の旅でいちばん感じたのはそこ。



あとひとつ書くとしたら、シンガポールの奇妙な高層建築たちについて。
やたらと「アート?」な高層建築が立ち並んでいるのだけれど、すごく既視感があって、わたしは2つの光景を思い出していた。



ひとつは宮崎駿の作ったOn Your MarkのアニメPV。
(余談だけどわたしは宮崎駿作品ではダントツにこの作品が好き。同列でシュナの旅、漫画版ナウシカ。次がアニメ版ラピュタナウシカ、ポニョ。)



もうひとつは、旧ユーゴで、ティトーが作らせたモニュメント群。
参考:25 Abandoned Yugoslavia Monuments that look like they're from the Future
どちらも「ぽっかりと開けた土地に突然ヘンなものが出てくる」という単純に視覚的な部分が似ているのだけど、
それだけでなく、
「やや偏った強い思想」「やや偏った未来への思い」等々を印象として受けるところが共通する、ような気がする。



話は飛ぶが、マラッカの街では日中はずうっと建設中の大規模な工事現場から「カーン、カーン、カーン」という澄んだ金属的な音がしていた。
それがずっと耳に残っている。



帰ってきた自分の国は、常夏の国よりよっぽど暑くて、わたしはもうすっかり冬を待ち望んでいます。
次に海外にいくときは、寒い国に行こう。

では、次の記事では食べ物について書きます!
(こう書いておかないと絶対書かなさそう。)