月と背中

今年の正月に目にした、なんでもない光景が忘れられない。



郊外の街はずれにある温泉施設に行ったのは、丁度、陽が山の端に落ちた頃だった。
わたしは、他の湯より一段高い位置に設置されている、露天の風呂釜に浸かった。


頭上に月があった。
薄い鱗雲の向こうに、じんわりと滲むように白く光っている。


別の方角の、少し低い位置には星。木星だろうか。
わたしは宇宙が好きな癖に、星座にはあまり詳しくない。


かなり長い時間、月と星を見ながらぼーっとしていた。
どうやら釜は湯温が高いことを理由に敬遠され気味のようで、まるで誰も入って来ない。
湯釜から体を少し出すと、わたしの体から白い湯気があがる。
それが湯釜から立ちのぼる白い煙と一緒になるのが楽しいなと思って、体をお湯に沈めたり、出したりしていた。


体格の良いおばさまと、小さな女の子の2人連れがやってきた。
おばさまは最初女の子に数を数えさせたりして遊んでいたのだが、ふと空を見上げて、「あ、ほら月だよ」と立派なダミ声で言った。
「ホントだー!!」
「きれいだね。あっ、あっちには星だよ、見てご覧。」
「ホントだー!!!お星様ー!」

2人とも月をよく見ようとしてか、体は完全に湯から出ている。
大きなでっぷりした背中と、痩せた小さな背中。それぞれから白い湯気が流れて、深い紺色の空に溶けていく。


ただ、ただそれだけの光景だ。この話にオチはない。解釈すべき意味もない。
ただ、ただ。
2つの背中の後ろで、わたしは泣いた。

波照間島への旅

やぁ皆さんこんにちは。もうこのブログ更新しなさすぎて何の為にあるんだかわからなくなってきましたね……。
でも「誰も見てなさそうなところに記録する」ということはたまにしたくなる行為です。


さて、10月の上旬に沖縄にいってきました。
なんとこの年齢にして初沖縄です。ワーイ。
石垣島(主にハブとして使っただけ)、竹富島波照間島、本島という順番でうろつきました。


石垣島に着いたときは猛烈な嵐で、船なども出ておらず、「よもや明日も嵐なのでは」と思っていました。
実際次の日の石垣島も相当お天気は悪かったのですが、竹富島に着いたとたん恐ろしい勢いで晴れたので、
ぼーっとしていたわたしは背中を火傷レベルで日焼けしてしまいました。数日間、痛くて寝れなかったくらい。

まぁそんなこともありつつ、沖縄であったことやら感じたことをここに文章に……していると数時間かかりそうなので、写真を何個かのせて誤摩化します。







ものすごくたくさん、思うこと、感じること、あったのですが、言うことを1つだけに絞るとしたら、波照間島のニシ浜の美しさです。
波照間島は、有人島では日本最南端の島。
わたしがずっといきたかった、南の果てです。

わたしはそもそも「海に入る」という行為すら初めてだったのですが、
ニシ浜の海を見たとき、そして海のなかに入ったとき、「ここが死後の世界か」と思いました。

あんなに美しいものを見たことがなかったと、思う。
その空間に美しいものしか存在していなくて、自分がそのなかにいて、それがどんどん押し寄せて来る。

言葉にならない。
言葉はいらない。

きっとその感情を、昔の沖縄のひとは「ニライカナイ」という言葉にしたのでしょうね。

わたしはきっと、その入り口の門の手前にいたのだ。

常夏の国、食べもの編


やっぱり旅のわかりやすい醍醐味と言えば食べ物!
なのですが、実はわたし、今回はそんなにすごい勢いで食べていたわけではありません。
なぜなら2日目の朝以降壮絶にお腹を壊していたから……。
原因はわかりませんがおそらく水、あるいは香辛料、そしてシンガポールの建物やバスのアホみたいに強いクーラー。
クーラーに「あなた何をそんなに冷やしたいの?マグロ?」と問いつめたいくらい強かった。
いやもちろん長袖羽織ってましたよ……でも夏物じゃだめだった(;-;)



あっ話が逸れてしまいました。
ではでは、今回の旅行のおいしかったものベスト3はこちら。


1位:雲呑麺(ワンタンミー)/HONG SHENG 鴻昇茶餐室(マラッカ)


まず最初に、マラッカの情報はほぼ全てこちらのWebサイトで調べました。
情報量が豊富で本当に助かったです。


このワンタンミーのお店も、こちらのサイトで知って行ってみました。
ホテルから歩くこと、20分くらいだったかな。


とにかくこの旅ではひたすらiPhoneのお世話になりっぱなし……。
正確にはiPhoneに入ってるgoogle map様にお世話になりっぱなし……。
もう現代の羅針盤だよね。あまりロマンは無いけれども。


途中の道ではたくさんのやせた猫や、淋しそうな犬も見かけました。
あと腐った下水のにおいも記憶に残っています。


お店は道路に面してわーっと開けていて、なんというか屋台のお店に屋根がついているバージョンとでもいったらいいのでしょうか。
あるいはオープンテラス。
上記のサイトを参考にして、ワンタンミーのドライ、ノーチリ!で注文しました。
特にメニューとか貰わなかったし、きっとこのお店はワンタンミー1品勝負のお店なんじゃないかな。


で、注文したワンタンミーはこちら。



うおおおおおいしいー!!!!!
麺にコシがあって味付けが絶妙!これはおいしい!
夫によると、わたしは旅の間に「ワンタンミーおいしかった」と10回は言ったそうです。
いや本当にね、おいしかったです……。
日本に帰って来てから1度ワンタンミーの再現を試みましたが、ただの油そばになってしまった。
麺が大事なんだろうな。
またチャレンジします!



2位:肉骨茶(バクテー)/わからぬ……

マラッカからシンガポールに帰ってきた夜に、バス停付近で食べました。
確かアラブストリート?の近くでもあったような気がするけど、このバクテーを食べたあとに「壮絶にタクシーがつかまらなさすぎてぐったり」事件が発生したためそこまで記憶が無いです。
(ちなみにこのタクシーつかまらないのは、シンガポールでは時間帯によっては日常茶飯事らしい。)

バクテーシンガポールで食べたかったものの1つ。
閉店ギリギリのお店にすべりこんでありついたバクテー、肉の出汁がよく出てておいしかった!
でもちょっと味が濃いタイプだったかな?内蔵系のえぐみも強めだった気がする。
今度はさっぱりタイプも食べてみたい。
というか早速今週家で作りますけどね……スペアリブ買ったし……。




3位:チキンライス/Empire Cafe at Raffles Hotel

シンガポールで一番食べたかったのはチキンライス!
家でもよく作るけど、やはり本場のは食べたいと思って乗り込んだのに、なぜかチキンライスを食べ逃すこと数日間。
最終日の飛行機に乗る前、Raffles Hotel見物ついでに、Raffles Hotelのカフェで食べました。
おいしかった!
でも3位なのはなぜかというと、鶏もおいしかったのですが、鶏より「ご飯」の方がおいしかったからです。
ご飯はね、本当に香りが上品ですばらしかった。




(写真はホテル外観です。)


番外編:
■Boiled Fishみたいな名前の料理/故乡川菜酒楼

名前はこんな感じだったと思う。ので、「煮魚……?」的な想像をしましたが、
実際は「地獄の蓋があいた……」とでも形容すればいいような凶悪に真っ赤なスープに、
ネギやその他野菜と魚が入っているようなものでした。
おいしかったです!
このお店では他にも色々辛いものを食べましたが、どれもおいしかったです◎



■チキンスープ/Flavors cafe(マラッカ)

ニョニャ料理のカフェで食べました。
このカフェはお店の中に日光がたくさん注ぎ込むつくりになっていて、かつお店の中に小さな池須のようなものがあって鯉が泳いでいたりして、雰囲気がとても素敵でした。
ナシゴレンもニョニャパイティー(うすいタルト生地の中に切り干し大根が入ったような料理。下の写真。)もおいしかったけど、シンプルなチキンスープが、あっさりしていてとてもおいしかった。







以上!食べもの紀行でした。
これにて旅の記録はおしまい。
またしばらくブログは更新されないことを予言しておきます……苦笑。

 常夏の国、地形と季節、奇妙な建物群について




常夏の国に旅をしてきた。
マレー半島随一歴史のある街と、そのさきっちょのジョホール海峡を隔てた小さな島。
マラッカと、シンガポール。(上の写真がマラッカ。)
夏の空と、強い陽射しと、乾いた風は両者に同じだけれども、積み重ねた時間の持つ空気は大きく違う。



シンガポールからマラッカまでは、バスで片道約4時間ほど。
シンガポール国内の極端なほど都市的な風景を横目で流し見ているうちに、バスはいつの間にか国境を越える。
イミグレーションでの確認は"amico?"、"Have a nice holiday."の二言だけだった。名前ひとつの、軽やかな越境。
不思議な感覚。
日本とお隣の国は、もうちょっと遠い気がする。



マレーシア国内に入ると、打って変わって熱帯植物の林が延々と続く。
日本の植物とはまったく違う形状の、見慣れない木々をぼーっと眺めながら、「地形」や「気候」は思っているよりも強烈に、その土地に暮らす人間の「性質」「在り方」のようなものを規定するのだな、と考えていた。



そう、「気候」について。
四季は当たり前のように日本人に寄り添うけれども、もしかしたら最も日本を日本たらしめているのは四季なのかもしれない。
春、夏、秋、冬と季節が巡るたびに、わたしたちは形のあるものも、ないものも、あまりにもたくさん享受しているのだなぁ。
今回の旅でいちばん感じたのはそこ。



あとひとつ書くとしたら、シンガポールの奇妙な高層建築たちについて。
やたらと「アート?」な高層建築が立ち並んでいるのだけれど、すごく既視感があって、わたしは2つの光景を思い出していた。



ひとつは宮崎駿の作ったOn Your MarkのアニメPV。
(余談だけどわたしは宮崎駿作品ではダントツにこの作品が好き。同列でシュナの旅、漫画版ナウシカ。次がアニメ版ラピュタナウシカ、ポニョ。)



もうひとつは、旧ユーゴで、ティトーが作らせたモニュメント群。
参考:25 Abandoned Yugoslavia Monuments that look like they're from the Future
どちらも「ぽっかりと開けた土地に突然ヘンなものが出てくる」という単純に視覚的な部分が似ているのだけど、
それだけでなく、
「やや偏った強い思想」「やや偏った未来への思い」等々を印象として受けるところが共通する、ような気がする。



話は飛ぶが、マラッカの街では日中はずうっと建設中の大規模な工事現場から「カーン、カーン、カーン」という澄んだ金属的な音がしていた。
それがずっと耳に残っている。



帰ってきた自分の国は、常夏の国よりよっぽど暑くて、わたしはもうすっかり冬を待ち望んでいます。
次に海外にいくときは、寒い国に行こう。

では、次の記事では食べ物について書きます!
(こう書いておかないと絶対書かなさそう。)

読書2010_素敵本あみこ編

みなさまあけましておめでとうございます!
このブログも、ついに更新が半年に1回程度になってきましたね……最近、もういっそ「読書記録ブログ」にしちゃおうかと考え中です。
でもそれだったらもっと本ブログっぽいデザインにしたいしなぁ。
さて、あみこの2010おすすめ本のコーナーですよ。2009は書いてなかったのを良いことに、2008年に読んだ本も混ざっているような……混ざっていないような……。

今年も素敵な本といっぱい出会いましたー!
て思ったけど、下に書き出してみたら割とジャンルに偏りが……およよ……
もうちょっと一般的な(?)文芸系も読んでるはずなんだけど。ヒットしたところだと「告白」とか「天地明察」とか「悪人」とか。なんだろうなぁ文芸系があまり心に響かなくなってきているのかしら……。



クジラ・イルカ大百科

今年買った本の中でいちばん高い。笑
もともと生き物は好きなのですが、去年はさらに、そして特に「海の生き物」への興味が一層深まった年でした。なぜかはよく覚えていません……。
それでついにこの百科事典兼写真集みたいな本を買ってしまった次第です。内容は本当に充実していて、クジラの各種類の生態や行動について詳しく知ることができるし(特にクジラの生殖行動などは興味深かった)、何よりダイナミックで美しい写真が豊富でテンションがあがります。
万人におすすめすることなどできるはずはない本ですが笑、クジラやイルカが好きな人にはとてもおススメです!!!

倒壊する巨塔

9.11事件にいたるまでの歴史を紐解いた、大変素晴らしい本。
中東諸国の独立、イスラエルの建国、グローバルジハードの誕生といった「大きな出来事」から、テロリスト(ビンラディン、ジワヒリやサイイド・クトゥブ)・それを追う米国捜査機関の個人(オニール)などの「小さな物語」まで丁寧に緻密に描いていること。
「国家と宗教の大きなうねり」「ひとりひとりの人間のちいさな波」が複雑に絡み合ってあのテロに結びついたのだということが理解でき、9.11の持つ意味が自分の中で大きく変わりました。
また、著者はアメリカ人ですが、どちらかの視点に偏ることのない客観性は見事です。
2010、最もお勧めする「読むべき」本です。


サイエンス・インポッシブル

タイムトラベルやテレポーテーションなど「SF世界の架空のできごと」が、物理学的に達成可能かどうかを、物理学者の方が丁寧に解説した本。
ちょっと難しいところもありますが、面白かったですー。


ベッドルームで群論

この本の題名を誰かに言った時、「ベッド?なんかいやらしい話ですか?」と言われたのですが、いやらしい話ではありません。笑
タイトルになっているのは、「マットレスにいつも同じように寝ていると体の形にくぼみができてしまう。それを防ぐ為にマットレスをひっくり返すが、より最適な方法でマットレスをひっくり返す方法は……?」という、群論を扱った章のこと。
群論の他にも暗号化、アルゴリズムなど様々な数学の話題が登場するが、著者がとてもチャーミングなのもあって、「数学の小難しい解説」ではなく、「暮らしの中の疑問を数学で考える」というような雰囲気になっています。
といってもやはり(わたしには)むつかしい部分もありましたが、それこそ「ベッドルームでちょっとずつ」読むのにふさわしいような素敵な本です。


美の幾何学

物理学者、数学者、絵本作家の3人が「シンメトリーの美」を、数学的に楽しく語った鼎談形式の本。この絵本作家というのは、わたしが幼少時から大好きだった「安野光雅」さんであり、それだけでわたしにとっては嬉しい本でした。
図などが多く、それだけでもじゅうぶん楽しめます。

フェルマーの最終定理

これは明らかに去年読んだ本では無いのですが、何かのきっかけで再読したらやはり超超超面白かったので載せておきます。
言うことはない、筆舌に尽くしがたい面白さ。
数学界の超難問「フェルマーの最終定理」に挑んだ数学者たちの戦いを丁寧に描き、そしてついに、その時はきた……。
ちなみに上にあげた数理本より、かなりとっつきやすい。「自分は理科とか数学とかもう死んでも嫌」という人にもおすすめできます。
こんなに面白いノンフィクションはそうはお目にかかれ無いです。今更わたしが言うことでもないけれども、必読!!


庭の時間

わたしの敬愛する料理研究家・辰巳芳子さんのエッセイです。
鎌倉のご自宅を囲む庭の四季折々が、月ごとに綴られます。
わたしは今日本で一番素敵な文章を書くのは辰巳さんだと思っているくらいで、その丁寧で愛情のこもった「日本語」は一読の価値有りです。

料理歳時記

上に書いた辰巳芳子の今は亡き母、辰巳浜子のエッセイ。
季節折々の生活と、それにあった季節の食材と、レシピと、と、今では失われつつ在る「日本の暮らし」が綴られています。
文体は浜子さんと芳子さんで似ているのですが、伝わってくる印象は全く違い、浜子さんは元気で、お茶目で、闊達な女性だったのだと察せられます。そして、時々「声に出して読みたい、覚えておきたい日本語」というべき名文が登場し、胸があつくなります。
是非多くの人に読んでいただきたい本。


女王陛下のユリシーズ号

海洋冒険小説」とも「戦争小説」とも呼ばれるが、何にせよ超名著。
イギリス海軍、老朽化の激しい巡洋艦ユリシーズ号とその乗組員たちが、「ほぼ絶対不可能」な任務をもって戦う物語。
敵はドイツの海軍、空軍、そして何より筆舌に尽くしがたいほど荒れ狂う北極海の雪嵐の猛威。
ハッピーエンドは望むべくもないが、極限状態の中での男たちの物語は本当に胸にぐっときます。
比べるのはちょっとアレかもですが、「終戦のローレライ」的な雰囲気と言えばわかるでしょうか。
とにかく面白いので是非読んでみてください◎

天冥の標

現在進行形(全10巻予定?)の物語としてはわたしが最も楽しみにしているSF小説、というか宇宙を舞台にした壮大な歴史絵巻。
SF小説故に、万人には勧められないのですが、「日本SF小説の最高峰」と言えるのではないかと思うほど猛烈に面白いです!!!!!!
1巻ごとに時代も場所も違い、これがどうやって1巻・2巻の状況につながるの!!??というところで謎がいっぱい残っていて、ああああもどかしい!!!
はやく次の巻が出ないかなぁぁぁ待ちきれない!!!!


戦闘妖精・雪風 アンブロークン・アロー

戦闘妖精・雪風<改>、グッドラック戦闘妖精雪風の続編。
正直に申し上げて一番好きなのはグッドラックですが、アンブロークンアローも面白かったです。ますます哲学の迷宮になっているので好き嫌いは別れそうですが……まぁ神林ワールドですよね。
雪風を読むとしばらく神林ワールドに入って帰って来れなくなります。
「人間って、なんだろう?機械ってなんだろう?」みたいな。答えは出ないので、ひたすらもんもんとしてしまいます。笑
これだけ読んでも「???」だと思うので、是非<改>からお読み下さい。


星を継ぐもの

SF小説の超超名著を読んでいなかった!!
これに関してはあまり言うことはないです。面白いし、最後に「答え」が出る瞬間は鳥肌がたつ。素晴らしい。
SFうんぬん関係無しに是非お勧めしたい本です。


日本人の英語

これは今まだ読み途中なので、書くのはどうかと思ったのですが、今のところ大変面白いのでお勧めします!!
外国人の著者が、日本語で、「日本人のヘンな英語」について丁寧に解説してくれる本。「なるほどー」連発です。



ではでは!!
皆様、よい2011年をお過ごしください◎

益子、一期一会(益子プチガイドマップも作ってみたよ)

遅めの夏休みに、益子にいってきました。
仕事でおつきあいのある方々に「あ、夏休みですか!どこか行かれるんですか?」と聞かれては、
「益子です……」ともじもじ言い、「…………あ、あー!益子焼の!茨木?あ、群馬でしたっけ?」などと言う会話を繰り返すはめになったので言っておきますが、益子は栃木県です。

でも「益子」て聞いて、100人中100人の勢いで「益子焼」て連想するのはある意味すごいですよね。
もちろんわたしが益子にいった理由も益子焼です。器が好きなんじゃい。


とてもとても良い旅だったので、お店などを紹介してみようと思います。


夫婦共々車の免許が無いので、益子には電車で行きました。
益子駅真岡鐵道という、SLも走っている鉄道にあります。残念ながらSLは見れなかったけど、車窓からは広い空と広い畑が見えました。


益子駅は小さな駅。
町を基本的には1本の大きな通りが貫いていて、駅から道沿いに歩いていけば、ちらほらと器やさんが現れてきます。
駅から近い順(大体です!)に、印象に残ったお店を書いてみます。


あっその前に。最初に通りすがった、自転車にのった小学生の女の子が挨拶をしてくれた!!!
結構感動してしまいました。が、動揺したのとあっという間だったので、「こんにちは」と言えませんでした。
ありがとう!「こんにちは!」(遅い)


民芸店ましこ

素朴な雰囲気のお店。
どうやら人間国宝の濱田さんがこのお店の名前をつけたらしい、由緒正しい感じのお店ですが、気軽に入りやすい雰囲気です。
作家さんの器を中心に置いているんだと思います。
わたしはこちらで、丁度欲しかった平たい取り皿のイメージにぴったりなものがあったので、購入しました。


tete cafe&gallery

若い感性のにじみ出ている、おしゃれな雰囲気のかわいらしいお店です。
とてもこじんまりしています。
器も、「陶芸とか興味無い……」というような若い女の子でも「かわいい!」て言ってくれそうな、ガーリーな雰囲気が漂っています。


陶庫

洗練されていて落ち着いた雰囲気のお店。店内はやや広く、この日も個展が行われていました。
器の品揃えもなかなか素敵でした。


G+OO(ジープラスツーノウツ)

おしゃれであたたかい雰囲気のお店。
置いてある器にすごく愛情が感じられ(もちろん他のお店だってそうでしょうけど)て、印象が良かったです。
陶器を使ったアクセサリーなんかも置いてありました。
わたしはここでは近藤賢さんという方の器を買いました。早速サラダなんかを盛ってます。


大宿窯

実は、もうちょっと駅から離れた先の駐車場のような広場のようなところで、テントごとに色々売られているスペースがありまして、そこで丼をかったのです。
で、そのときに「お店もあるんですか?」と聞いたところ、大宿窯さんだということで、店舗も見させてもらいました。
お丼はこちら。


大誠窯

店舗はあまりきちんと見てないのですが、ここには「登り窯」があり、そちらを眺めさせていただきました。
とても素敵だった。ここで作業しているところも見てみたい!


やまに

やまにの何店舗かが集まっているので、なんというかすごく「町の中心」「観光センター」のような雰囲気が漂っています。
器のお店はとにかく広く、大量の陶器が集まっていて圧倒されます。
わたしは2日目のお昼をここの「お食事処やまに」さんでいただきました。実はあんまり期待してなかったのですが、わたしの食べた「かき揚げもりそば」は結構美味しかったです!!
おそばもまぁまぁ美味しいし、かきあげがすごい大きい!かきあげはお出汁の他に、抹茶塩やカレー塩もあったのがわたし的にはポイント高かったです。笑


見目陶苑

こちらもオシャレなギャラリー、そしてカフェ(KENMOKU)です。
この日は若い方の個展をやっていました。
カフェは夕方に入ったせいか、ランチメニューは豆腐丼の1種類しか残っていなかったので、豆腐丼をいただきました。
おいしかったです!ご飯は雑穀米で、お味噌がのっていて。お味噌汁が陶器で出てきたのが新鮮でした◎
カフェで働いている方も、若い女の子でオシャレさんな感じでかわいらしかった♪
ちなみに、こちらは次の日のお昼に通りかかったときはお店の外まで人が並んでおり、かなりの人気スポットなんだと思います。


antiques道具屋

こちらは器のギャラリーではありません。名前の通り、アンティークショップ。
店内はかなり広く、そしてわたしの大好きなようなもの(=古くて素敵ななんやかんや)がたくさんあって鼻息荒く見回りました。
やー素敵だった。


道祖土 ましこgallery walk2010

これはお店ではなくてイベント名です。
丁度、益子の陶芸広場でイベントが行われていて、たくさんのテントが並んでいました。見れてラッキーだった。
陶器に限らず、いろんな「ものづくり」の方が出品されていて、とても楽しかったです。
ここではこの器を買いました。作った方の名前をメモしそびれてちょっと落ち込んでます……。
この広場までくると、駅から城内坂を通り1本道だった道は、丁度、県道230号線にぶつかります。


STARNET

県道230号線にぶつかったら、右に曲がってしばらく歩き、池が見えてきたら、そこを右に入ったところにこのギャラリーはあります。
STARNETはおそらく益子で最も有名なギャラリー(兼レストラン、コンサートホールなども)。
数多くの雑誌に取り上げられ、そのセンスと感性を以て益子のリブランディングを成し遂げたお店として広く知られています。
お店は非常にオシャレで洗練された雰囲気。この感性を益子という町に持ち込み、成功させたのは凄いなぁ。
ただし個人的には、もうちょっと作り手の気持ちとか風土が伝わってくるようなお店が好きです。
(レストラン「山の食堂」にも行きたかったのですが、今回は器に財産をつぎ込むことにしたので、結局行きませんでした。)

写真はSTARNETに向かう道で。(STARNET外観ではありませんよ!笑)


益子陶芸村

県道230号線にぶつかったら、左に曲がってちょいと歩くと、益子陶芸村があります。
ここは小さなお店が5、6軒集まっていて、そのうちの1軒でこの器に一目惚れ。
同じ器がもう1つあったんだけど、「それよりこっちの方が素敵だね」と話していたら、優しそうな御婦人が「そうでしょう。こっちの方がいいでしょう。」と話しかけてくれました。
「なかなか無いでしょう、ピンっとくる器って。」とおっしゃるので、「そうですね、すごくいっぱい見ましたけど、見る量が多ければいっぱい見つかるってものでもなくて、ピンとくるものってほんの数点ですね」とわたしもお話しました。
というわけでお買い上げです。


そして、この陶芸村の中にある「相玄窯陶芸教室」で、陶芸体験。
ろくろに挑戦してみました。
あらかじめyoutubeの動画とかで見て、「えっ難しそう……」と及び腰になってしましたが、難しそうな工程は全部先生がやってくれました……。
そしてそれにも関わらず超へたくそなわたし。
一緒に体験していたご家族など、お子様とお母様が次々と作り上げていくのにわたしは全然出来ず、ご家族のお父様に「むずかしいですよね!」と励まされる始末でした。
全然自分の思う通りにならないし、土は厚ぼったくなっちゃうし、でもすごい楽しかった!!


森のガーデン・益子

宿泊したのはこちら。
ご家族でやってらっしゃる、あたたかくて気持ちのいい宿でした。
お料理も家庭料理っぽい感じでとてもおいしかったです。お風呂は、木(ひのき?)の広めのお風呂で、貸切にできます。気持ちいいー!
あとなんといっても、アロマサロンがあるんですよ!!というかお嬢さんがセラピスト(超かわいい)なんですよ!
せっかくなので1時間のコースでやっていただきました。
東京に比べてとっても良心的なお値段です。
そしてすごく気持ちよかったです。この細くて小さい女性のどこにこんな力が……ていうか何その手の動き!?みたいな。
ちなみに翌朝は「疲れがとれてスッキリ♪」というより、今まで隠れていた疲れがドーッと出る感じでびっくりしました。
あっあとポメラニアンのココちゃんがいて可愛かったですー!!!すぐおなか見せちゃうのかわいいーーーー(*・-・)


知床窯 益子・星の宮陶房

最後に。
このお店は道のりで言うと、陶庫さんとG+OOさんの間くらいにあるのですが、2日目の最後になにげなく立ち寄りました。
店内の器はどれも本当に素敵で、入り口から数歩の時点でこの旅で一番胸がときめいた、と言ってもいいくらいだったのですが、店の奥の棚においてあったある器に、目が吸い寄せられました。
天目茶碗。抹茶椀です。


美しすぎてびっくりした。びっくりしすぎて涙が出た。
もうずっと見てたい。
海のような、宇宙のような、夜のような。オーロラのような銀河のような。星のような月のような。
知床の自然が宿ったかのような器です。
言葉にすると大変陳腐なのですが、とにかく惚れました。
お店にいた女性が、「夫が作っているんです」と話しかけてくれました。そしてお茶碗について、作り手としての興味深いお話を聞かせていただきました。
「作る時はもう一瞬で作っていく。特に抹茶椀は、気合いが入ってないと作れない。器に一本芯が通ってないと駄目」とかそういうお話。
そしてその後、お値段であきらめて駅まで帰りかけたりとか作っている旦那さんが登場したりとかその他ここではお話しできないドラマチックなあえやこれやが起きて、もう人の温かさにベソかきながらわたしは益子を後にしたのです。
(ドラマチック部分を聞きたい方はあみこをお茶やお酒に誘ってください。笑)
素晴らしい奥様、素晴らしい作者の旦那様。そして器。
この方たちに出会えただけで、益子に行って良かった。です。


その器がこちら。
写真では美しさがなかなか……むつかしい! 見たい方はあみこ宅へお越しください。笑
こんなお茶碗その辺に転がしておくわけにもいかないし、とりあえず大切にしまっております……。
元気がないときとかに引っ張りだしてきて、見よう。
ていうか、お茶を習って、ちゃんと使おう。使いたい。そう思わせてくれた器でした。



他にも行きたいお店、カフェ、宿などたくさんあったし、あとなんか観光スポット的なところにまったく行かなかった……苦笑。
というわけで、そういうのもひっくるめたgoogle mapを作成しました。
行きたい方の参考になれば!
(あと文章が非常に乱雑ですみません。)



より大きな地図で 益子 を表示




益子、すごくすごくいい町でした。また行く!